今回はミステリー小説が書きたい、書いている人に向けて、主人公の動機付けを引き立てるエピソードの作り方を、例題を交えて解説します。
- ミステリー、サスペンス小説が書きたい
- キャラの動機付けが弱いと指摘されてしまう
- ストーリーを盛り上げるエピソードが作れない
ミステリーに限らず、キャラの行動の動機付けはストーリーを作る上でとても大事な要素です。
そしてミステリーにおける主人公キャラの動機付けには、事件と関連性のあるエピソードが不可欠です。
この記事を読むことで、事件を解決したいという主人公の熱い気持ちが読者に伝わるようなエピソードの作り方がわかります。
そして読者が主人公に感情移入できるミステリーが書けるようになりますので、ぜひ最後までお付き合いくださいませ。
主人公の行動には「表面上の動機」と「動機に結び付くエピソード」がある
ミステリーの主人公である探偵・助手役が「事件を捜査する」という行動をとる場合、必ず動機付けが必要です
何となくで行動しちゃダメぽよね
- 職務、仕事だから
- 好奇心旺盛
- 正義感が強い
- 自分に被害がある
- 大切な人を守るため
- 復讐・弔い合戦
- 欲のため
- 義理人情のため
- 記憶喪失
- サイコパスな理由
動機の種類についての詳細は、以下の記事が参考になるぽよ
ただし、上記のパターンはあくまでも表面上の動機です。
ストーリーを盛り上げるには表面上の動機付けだけでなく、動機に結び付くエピソードが不可欠なのです。
例えば警察官が探偵役の場合、仕事なのでもちろん事件の捜査を行いますが、それだけだと物語として深みがありません。
なので、
- 過去に犯罪に巻き込まれた経験から、同じような被害者を出したくなくて警官になった
- 過去に同僚が殺され、仇をとりたい
- 死刑囚の娘を養子にして育てている
などなど、探偵役や助手役にエピソードを付け加えることで、キャラの行動の動機付けに深みを与えることができます。
「過去に同僚が殺され」とか「死刑囚の娘を養子に」は警察官になったあとの話ぽよね
「職務、仕事だから」の動機に直結するエピソードって、警察官になった理由を考えるんじゃないのかぽよ
エピソードは表面上の動機と結びつくものではなく、ストーリーの中で発生する事件と関連付けられるものを用意するのです
どういうことぽよ?
「過去に同僚を殺した犯人を追うストーリー」
「養子にした死刑囚の娘が誘拐され、その娘を助け出し、かつ実の娘でなくてもどれだけ大切に思っていたかを描くストーリー」
といった感じですね。
ストーリーの軸になる事件と関係するエピソードを用意すると、仕事だからっていう理由だけじゃなく、主人公の熱意が感じられるでしょう。
実際にエピソードを作ってみよう
では例題をもとにして、エピソードを考える過程を見ていきましょう。
あなたも、自分ならどうするかを考えながら読み進めてみてください。
作り方1 主人公の性格を想像しながら掘り下げる方法
例題:大切な人を救う動機の引き立てエピソードを考えてみよう
私の過去作品を例題にしてみますね
【ざっくりストーリー】
1年後の自分と会話ができる主人公。
引きこもりの姉が10日後に飛び降りて死んでしまう、ということを未来の自分から聞かされる。
主人公は1年後の自分の協力を得ながら、姉を救うために奮闘する。
過程1 表面上の動機は何かを考える
まず、このストーリーの設定を見る限り、探偵役となる主人公の動機付けとして真っ先に思いつくのが「姉を助けて未来を変える」ことですね
未来変える系の「大切な人を救う」ストーリーぽよね
これがまず、表面上の動機です。
過程2 現状の主人公が事件をどのように考えるかを想像する
姉は家族の一員ですから、よほどの理由がない限り大切な人っていうのはわかりますよね
なら、助けないといけないぽよ
もちろん、そういうストーリーにはなりますが、ここで主人公の心情を想像してみてください。
兄弟、姉妹の中に引きこもりがいるというのは、本人もつらいでしょうけど、家族にとってもしんどい状況です。
特に主人公が思春期の場合、反抗期でもあるので、ひきこもりの姉にうんざりしているのではないでしょうか。
そんなとき、「姉が10日後に死ぬ」と聞かされた場合、どうでしょう。
助けたいという気持ちと、普段のうんざりした気持ちが混ざって、戸惑うのではないでしょうか。
また、今を普通に生きている姉を普段から見ているので、10日後に死ぬなんてなかなか現実味が湧かないかと思います。
これはキャラの性格にもよるので、上記が正解と言っているわけではありませんよ。
「姉を助けるために行動する」という動機をもっとリアルにするために、まずは姉のピンチを知った主人公がどう思うのかを深掘りするのです。
過程3 大切な人が大切だと本気で思えるエピソードを用意する
ストーリー的には、戸惑う主人公が、それでも姉を大切だと思う気持ちに気づき、助けるために立ち上がる流れになるでしょう。
大切な人を救うパターンの場合、その人が主人公にとって大事な人だと思えるエピソードが不可欠です
家族だから当然、で片づけてはだめですよ。
これには過去の思い出を用意するのが効果的です。
- 昔はしっかり者で、幼い頃は主人公の手を引いてもらっていた
- いじめられていたときに、姉が助けに来てくれた
- 迷子になったとき、親よりも先に迎えに来てくれたのが姉だった
こういった思い出エピソードを用意し、それを主人公が思い返すシーンを盛り込むと、「大切な人を助ける」という動機に深みがでますよね。
さらに姉の引きこもりと未来の死はストーリーの謎と関連があるので、姉を助けることで昔のしっかり者だった姉を取り戻すという強い目的も生まれます。
これが主人公の動機に結び付くエピソードぽよね
キャラの性格を想像しながら掘り下げるやり方の流れ
作り方2 お約束パターンをアレンジする方法
例題 主人公が警察官の場合の引き立てエピソードを考えてみよう
連続殺人犯を追うストーリーを例にしてみましょう
過程1 表面上の動機は何かを考える
主人公は警察官ですね
ということは連続殺人が起きたら、捜査するのは当然ぽよね
ということで、表面上の動機は「仕事・職務だから」です。
過程2 発生した連続殺人と主人公の関係を掘り下げる
警部!
被害者の口の中に食べかけの芋けんぴが入っていました!
その手口、我の同僚が殺されたときと同じぽよ!
芋けんぴから被害者とは別のDNAを持った唾液が検出されたよ
おそらく犯人が食べていた芋けんぴを、被害者の口の中に入れたんだろうな
自分のDNAが付着した芋けんぴを堂々と……
警察への挑戦ってやつか?
おのれ、やつは必ず捕まえてやるぽよ!
同僚の仇ぽよ
という感じで、事件と主人公に過去の因縁などの関係性があると、ただ仕事だからってだけの動機よりも深みが増しますね。
連続殺人に狂気を感じる同一の手口だったり警察への挑戦的な証拠を残すなどは、よく使われる手法ですよね。
そういったお約束展開を自分なりにアレンジしましょう。
過程3 同僚の仇を打ちたいと心底思えるエピソードを用意する
俺、この事件を解決したら結婚するんですよ
それはめでたいぽよ
でもお主は優しすぎるから、尻に敷かれるぽよね
いや~、情けないっすね
ははは
これが最後に見た、同僚のへのへのもへじ刑事の笑顔となった……。
というように、ともらい合戦を盛り上げるための過去の思い出エピソードを考えると、ストーリーがさらに盛り上がりますね
へのへのもへじ刑事の見事な死亡フラグぽよね
お約束は効果的だからこそ、お約束になったんですよね。
普通に殺されるより、先の幸せがもう少しで手に入ったはずの人間が殺されると、悔しさや悲しさが倍増するわけです。
とはいえ死亡フラグという言葉が浸透しすぎた昨今、死亡フラグをギャグで使う作品も多くなったので、上手くアレンジする必要はあるかもしれません。
お約束パターンをアレンジする方法の流れ
作り方3 「これは使える」と思ったエピソードをアレンジする方法
例題 サイコパス探偵の場合のエピソードを考えてみよう
とある作品で、ヒロインの切断された手を欲しがるという、サイコパスで頭の良い主人公がいたんですよ。
しかも天才的頭脳を駆使して、自分の手を汚さずヒロインの手を手に入れようとしたんです!
「手を汚さず」とか「手を手に入れる」とか、手手手ってややこしいぽよね
でも確かにサイコパスぽよ
それ、本当に主人公かぽよ
ちょいとこれをアレンジして、サイコパスな探偵を作ってみましょうか。
過程1 「ヒロインの手を欲しがる」を別のものにアレンジしてみる
手を欲しがる、だとただのパクリなので「ヒロインのキレイな生首を欲しがる」というのはどうでしょう
お主もたいがいサイコぽよね
いや、あくまでも元ネタをアレンジしただけですよ
過程2 「生首を欲しがる」ヤバいやつを主人公にするにはどうすればいいかを考える
まず、ヒロインを自ら殺した時点で、ただの殺人鬼です。
狂った殺人鬼が主人公なら、まあそれでもいいんですけど、そんな主人公の話が読んでて面白いかと言われると微妙ですよね。
サイコパスだけど、それを隠しているっていうキャラでいかがでしょう
考え方がサイコパスでも、それを実行に移さなければ大丈夫!
でも、それでもただのヤバいやつぽよ
確かにそうです
では、どうすれば主人公になれますかね。
主人公らしさにもいろいろあるかもしれませんが、やはり正義の味方だったり他人を助ける勇気!
これが一番ではないでしょうか。
ということで、こんな感じでいかがでしょう。
- 世間で騒がれている殺人鬼がいる
- その殺人鬼は殺した人間の首を切断して持ち去るのが特徴
- その殺人鬼が誰かはわかっていないが、次のターゲットがヒロインだと知った主人公
- 主人公はヒロインを助けるため、殺人鬼を探し出す
でも、ヒロインの生首が欲しい主人公がヒロインを助けるって、なんだかちぐはぐぽよ
それに、サイコパス要素がなくなるぽよ
はい、そこで次の過程です
過程3 ヒロインを助ける理由とサイコパスな欲求を結びつけるエピソードを考える
あくまでもサイコパス探偵なので、ヒロインを助ける理由が主人公のサイコパスと結びつくエピソードにする必要があります。
こういう設定を決める場合、なぜ、なぜ、と繰り返し理由を掘り下げるように設定を考えていくとよいですよ。
- なぜサイコパスなのに殺人鬼からヒロインを助けたいのか
⇒ヒロインの生首が欲しくて、誰にも渡したくなかったから - なぜ生首が欲しいのに、自分はそれを実行しないのか
⇒切断する行為こそが一番やりたいことで、一回やってしまうと二度と楽しめないから - ヒロイン以外の首を切断すれば、何回でも楽しめるのではないか
⇒主人公はヒロインの美しい生首が欲しいのであって、誰でもいいわけではないから - 切断したいのに我慢できているのはなぜか
⇒主人公は美術部で、こっそりヒロインの切断された首の絵を何枚も描いており、妄想だけで楽しんでいた
ということで、私はこんな感じでサイコパス探偵の設定を考えてみました。
サイコパス探偵の場合、ヒロインを助けた後に、探偵がヒロインを助けた理由もサイコパスでしたってオチにすると、サスペンスっぽくてよいですね。
作り方3 「これは使える」と思ったエピソードをアレンジする方法の流れ
たくさん作品を読んでエピソード作りの引き出しを増やそう
エピソードを作るのなら、いろいろな作品を読んで引き出しを増やす必要があります。
どんな方法であれ、エピソードを考えるときには自分のこれまでの体験の中からとっかかりを得て、ようやくアイデアがでてきますよね。
しかし、普段から映画のような経験ばかりしている人なんていませんでしょ。
だからたくさん作品を見たり読んだりして、ストーリーを疑似体験するのです。
疑似体験も立派な体験のうちってことぽよね
作品を読むときは、作品内で起きた事件に対して主人公にどのようなエピソードが用意されているのかを考えながら読むようにしましょう。
そしてストーリーを考えるときに引き出しを開けまくって、自分の作品に取り入れるのです。
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また、「Kindle Unlimited」にはミステリーを書くうえで参考になる以下のような本が読み放題だったりしますので、そういった意味でもおすすめです。
- 3分で解ける推理クイズ短編集: 探偵気分で105のミステリーを謎解き!
- 5分間ミステリー 容疑者は誰だ 完全版 (扶桑社文庫)
- ミステリー「トリック」の作り方—「常識反転法」によるトリックの発想方法
- はじめて書く人のためのミステリー入門 ストーリータイプコレクション抜粋版 (「物語が書きたいッ!」文庫)
特に推理クイズなどはネタの宝庫です。
短い時間でたくさんのトリックや謎とその回答を読むことができるので、引き出しを増やすという意味ではかなりのスピードラーニングになりますね。
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まとめ
- 主人公の行動には「表面上の動機」と「動機に結び付くエピソード」がある
- 実際にエピソードを作ってみよう
作り方1 主人公の性格を想像しながら掘り下げる方法
作り方2 お約束パターンをアレンジする方法
作り方3 「これは使える」と思ったエピソードをアレンジする方法 - たくさん作品を読んでエピソード作りの引き出しを増やそう
主人公には必ず事件を解くための動機が必要ぽよ
主人公の行動には「表面上の動機」と「動機に結び付くエピソード」があります
例えば警察官だから、という理由だけだと物語に深みがありません。
警察官だとしても、過去に被害者を助けられなくて悔しかったとか、なぜ事件を解決したいのかを引き立てるエピソードが不可欠です。
作り方の1つ目は、主人公の性格を想像しながら掘り下げる方法ぽよ
以下のように考えるとよいでしょう。
ただし、あくまでも1つの考え方ですので、必ず以下を守れってことではないですよ。
作り方の2つ目は、お約束パターンをアレンジする方法ぽよ
色んな作品でおなじみのお約束パターンってありますよね
そいつを自分のストーリーに合ったエピソードにアレンジする方法です。
考え方は自由ではありますが、以下のように考えるとやりやすいかと。
作り方の3つ目は、「これは使える」と思ったエピソードをアレンジする方法ぽよ
お約束アレンジと似ていますが、いろんな作品を読んでいると「これはいい!」って思えるエピソードが見つかるはずです
そんなエピソードを部分的にズラして、さらに主人公らしいエピソードに掘り下げていく方法です。
では、これらの方法を参考にして、ストーリーを盛り上げるエピソードを作ってみてください。
おつかれさまでした
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