今回は小説を書く上での基本中の基本、一人称について解説します。
また、二人称についても触れていきますよ。
- 小説の初心者、作家志望者
- 一人称って、どういうもの?
- 一人称の書き方について基礎から徹底的に知りたい
- 二人称ってどういうもの?
この記事を読むことで、一人称のメリット・デメリットやルールが理解でき、一人称の小説が書けるようになりますので、ぜひ最後までお付き合いくださいませ。
人称とは
そもそも人称ってなにぽよ?
人称とは、どの視点で書かれた小説なのかを指すもので、主に一人称と三人称が存在します
二人称はないのかぽよ
ありますよ
ただ、二人称の小説はあまり見かけない、割と挑戦的な人称です
今回は一人称について解説し、二人称にも触れていきますね。
一人称の特徴
一人称とは特定の一人、主に主人公の視点で書かれた小説のことを指します
例を見てみましょう。
「目的のカフェの中へ入ると、一人の女性が柔らかい微笑みを浮かべながら、僕のところまでやってきた。」
この文章の「僕」というのは、主人公のことを指します。
小学生の時に宿題などで書いていた日記も、
「僕は今日、学校の帰り道で太郎くんに会いました」
というように「僕」とか「私」と書いていたかと思います。
ただ、日記の場合の「僕」「私」は書いている作者自信のことを指しますが、小説の一人称だと、「僕」「私」は作者ではなく主人公を指します。
そして一人称の文章は、見えている光景、体験や経験、心の声など、すべてが主人公のものとして書かれたものなのです。
このように一人称では常に主人公の立場で語られるので、
僕は思った、私は考えた、俺は面倒事が嫌いだ、
といった地の文はすべて主人公が感じたこと、思ったことが書かれるわけですね。
セリフは主人公以外の声もあっていいぽよね
はい、もちろんです
主人公の耳で聞いている他人のセリフ、ということになりますね
一人称4つの絶対ルール、守らないとド素人扱い!
タイトルが脅迫的ぽよね
ほんとのことですからね
小説を書かない読者さんからも、ド素人扱いされますぜ
では一人称の文章を書くうえで、絶対に守らなければいけないルールについて説明します。
それを知ることで、一人称の正しい書き方が理解できるでしょう。
一人称のルール1 主人公がその場にいない場面を描くのはNG
例えば
- 主人公がヒロインの「ヒロ子」さんとデートしています。
- そのことを面白くないと思っている「次郎」くん。
主人公のいないところで、ヒロインの友達の「トモ子」さんに主人公の悪い噂を話して聞かせました。
一人称の小説で、「2」の「次郎」くんと「トモ子」さんの会話シーンを文章に書くことはできるでしょうか
できないのかぽよ
はい、できません!
これは基本中の基本
一人称の小説では主人公が見ていない場面を書くのはNG。
「一方その頃」という感じで別の場面の出来事を書くことができないわけですね。
「2」のような事実があったことを書く場合、以下のようになります。
- 「あなたの悪い噂をトモ子さんから聞いたんだけど……」
と「ヒロ子」さんが主人公に問いかけてくる。 - 「あんたの悪い噂を聞いたわ。ヒロ子に近づかないで」
とトモ子さんが主人公に詰め寄る。
このようなイベントを利用することでしか、裏で起きたことを書くことはできないんです。
そして主人公が知ることで、ようやく読者も裏の出来事を知ることになるわけですね。
なんだか不便ぽよ
一人称のルール2 主人公以外の登場人物の心の中を描くのはNG
人間、誰しも他人の心の中は覗けません
一人称の小説はそれと同じで、主人公が主人公以外の他人の心の中は覗けないのです。
例えば
- 「私は悲しい気持ちになった」
これは「私」とありますね。
つまり主人公の気持ちなのでOKですが
- 「彼女は悲しい気持ちになった」
これは彼女という他人の気持ちです。
「彼女」という他人の心の声なのに、「悲しい気持ちになった」と断言しているのです。
他人の心の声を書いてるからNGということぽよね
そうです
ただ、主人公が「彼女」の顔を見て、明らかに悲しんでいる様子なのは察することができますよね。
なので
- 「彼女は悲し気な表情を見せた」
- 「表情を見る限り、悲しいと思ってはいるようだ」
というように、主人公が「彼女」の表情を見た印象を描くことは可能です。
もっとも、もしかしたら彼女の見せた表情が演技なのかもしれない、ということを100%否定することはできません。
現実世界と同じです
一人称のルール3 目に見える全ての事柄が、主人公の印象に過ぎない
印象に過ぎないって、どういうことぽよ?
例えば
- 「とてもきれいな砂浜だ。」
という文章があったとしても、これは主人公にはそう見えただけ。
実際にきれいな砂浜なのかもしれないし、観光地の砂浜だったとしたら地元の人にとっては「きれい」には見えないかもしれません。
つまり一人称で書かれた文章は、見えているすべてが主人公の印象ということです。
そのことを逆に利用して、実は誰かに幻を見させられているとか、ずっと病院で眠り続ける主人公が見ていた夢、というオチを作ることもできますね。
一人称のルール4 主人公の年齢や性別、性格に適した文章表現にする
これは線引きが難しいルールですが、ちょっと例を見てみましょう
家から学校へと向かう途中に、住宅街が一望できる見晴らしのいい道路がある。
道路の脇にはガードレールがあり、その先は擁壁になっている。
僕はそこで立ち止まり、景色を眺めた。
この文章、どのくらいの年齢の主人公をイメージしましたでしょうか
「学校」ってあるから、高校生くらいぽよ?
でも学校なら小学生も通ってますよね
もしもこの文章が小学一年生くらいの子供の視点だったとしたらどうですか。
小学生っぽくないぽよ
でしょう
とても違和感のある文章です
言葉遣いも全然子供らしくないですし、「擁壁」なんて言葉を小さい子供が知っているでしょうか。
では、こんな感じでいかがでしょう。
家から学校へ行く途中に、街が遠くまで見ることができる道があります。
道の端っこにはガードレールという、下に落ちないようにするためのものがあります。
僕は学校へ行くのをうっかり忘れて、そこから街をずっと見ていました。
だいぶ子供の視点らしい文章になったのではないでしょうか
これが、主人公に適した文章表現にするということですね。
ただ、幼い子供を主人公にするのは、実はかなり難しいのです。
なんでぽよ?
例えば修正版の文章でも、小学一年生で「ガードレール」という言葉を知ってるかな、さすがに知ってるか、どうだろうって迷いますよね。
それに幼い子供の視点だと心理描写や情景描写で使える言葉が限られてしまい、いい表現をさがすのに苦労します。
なのでどうしても必要という場合を除き、幼い子供の視点は避けたほうがよいでしょう。
一人称の利点と最大限に活かす方法
一人称の利点
いくつかルールを上げましたが、その根底にあるのはたった一つ、
一人称は常に主人公の視点であるということのみです。
ルールに縛りが多くて、書くのに不便そうな印象を受ける人もいるかも知れません
不便に感じたぽよね
いやしかし「常に主人公視点」
これさえ意識すれば、実はとても書き易くて、しかも常に主人公の心の声が描かれているので、読者も感情移入しやすいのです。
まさに小説の基本の形と言えるでしょう。
それに基本とはいえ、常に主人公視点というルールを逆手に取った、斬新な見せ方もできます。
例えば乙一先生の「夏と花火と私の死体」では、殺された女の子の視点で物語が進みます。
「見開かれたままの私の目は、そんな二人をただ羨ましそうに見つめていた」
著者:乙一 作品「夏と花火と私の死体」を引用
これ、殺された女の子が死んではいるけど、さも意識はあるような視点でかかれた文章なんですよ
恐いぽよ
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宮部みゆき先生のパーフェクトブルーでは、探偵役の人ではなく、探偵役の飼い犬の視点で物語が進みます。
他にも沖田総司が死ぬ前に刀で切ろうとしていた猫の視点、という短編を読んだことがあって、面白いなって思いました。
このように誰を視点にするかで、斬新な作品になることもあるのですね。
一人称の活かし方
絶対に守る必要はないのですが、一人称においてはヒーロータイプよりも共感タイプの人物を選んだ方がいいです
ヒーロータイプってなにぽよ
共感タイプってなにぽよ
- 無敵の強さを持ち、みんなから尊敬される勇者
- 世の男どもを根こそぎ虜にする、カリスマ的なスーパーアイドル
- どんな難事件も必ず解決してしまう名探偵
というように、憧れの対象となる登場人物を指します。
- 夢を追いながらバイト生活を続ける人
- 退屈なルーティーンにうんざりしつつも、毎日仕事に追われるサラリーマン
- イケメンくん、美少女に恋心を抱く一般生徒
というように、「なんかわかる」と多くの人が共感してしまうような登場人物ですね。
一人称の最大の強みは、何と言っても感情移入しやすいところです。
ですがヒーロータイプの登場人物は全人類の比率でいえば圧倒的に少数派なので、そんな人物の考えていることは読者が感情移入できない可能性が高いのです。
例えば
「櫻子さんの足元には死体が埋まっている」
「珈琲店タレーランの事件簿」
「神様のメモ帳」
など、一人称で書かれた推理ものの作品も、名探偵ではなくその助手のような立場にある一般人の視点で話が進む作品が多いです。
もしもヒーロータイプの人物の視点で書くのなら、共感できる弱みや葛藤を描くようにしましょう。
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二人称について軽く解説
二人称は小説でもほとんど見られない形式ですし、どうしても書きたいっていう強いこだわりがない限り書くことはないと思います
軽い説明だけで終わらすぽよね
二人称は主人公と読者の対話形式で進むお話が該当します。
例えば
- 「あなたは今、古いアパートの前に立っている。ここであなたに与えられた選択肢は二つある」
というように、語り部となる主人公が「あなたは」と呼び掛けている、この「あなた」は読者を指します。
二人称は上手く書くことで、読者を不思議な世界観に引きずり込むことが出来たりします。
例えば
ある科学者が、過去に実験体にしてきた人間たちの狂っていく様子を語っているとします。
過去の被験者はそれぞれ異なる実験を受けていて、その細かい内容を淡々と説明していくのです。
そして物語の最後に
「誰に説明しているのかって? 君だよ、これから実験体になってもらう君に、実験の趣旨を理解してもらおうと、親切丁寧に説明しているんじゃないか」
と、さも読者自信が被験者なのだと呼びかけることで、登場人物の一人になったように感じさせるわけですね。
二人称はかなり難易度の高い文章ですが、どうしてもやってみたいと思ったら、挑戦するのもよいかと思います
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まとめ
- 人称とは
- 一人称の特徴
- 一人称4つの絶対ルール、守らないとド素人扱い!
- 一人称の利点と最大限に活かす方法
一人称の利点
一人称の活かし方 - 二人称について軽く解説
人称とはどの視点で書かれた小説なのかというものぽよ
一人称は常に主人公の視点で書かれた文章、二人称は主人公と読者の対話形式で進んだりするものです
一人称には4つのルールがあるぽよ
ルールその1「主人公がその場にいない場面を描くのはNG」
ルールその2「主人公以外の登場人物の心の中を描くのはNG」
ルールその3「目に見える全ての事柄が、主人公の印象に過ぎない」
ルールその4「主人公の年齢や性別、性格に適した文章表現にする」
守るのが当たり前で、守らなかったらド素人認定という絶対ルールぽよ
一人称は感情移入しやすい文章ぽよ
なので、ヒーロータイプより共感タイプの人物に視点を置いたほうが利点を活かしやすいです
では、一人称の利点を最大限に活かし、読者に共感されたり臨場感あふれるような作品を書いてみてください。
おつかれさまでした
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