今回はミステリー小説が書きたい、書いている人に向けて、ミステリーの定番の一つであるアリバイトリックの作り方について解説します。
こんな人に読んでほしい
- ミステリー、サスペンス小説が書きたい
- アリバイトリックの作り方が知りたい
- トリック考えるのって難しそうで無理
トリックを考えるのって難しそうですよね。
頭がいい、奇抜な発想を持った作家だけが作れるものだと思っている方も多いのではないでしょうか。
この記事を読むことで、アリバイトリックの作り方の具体的な手順がわかります。
そして、自分の作品でもアリバイトリックを登場させて、ミステリー小説が書けるようになりますので、ぜひ最後までお付き合いくださいませ。
トリックの考え方3選
ミステリーにおけるトリックとは、第三者や読者に思い込みを植え付けて、犯人キャラには犯行が不可能だと錯覚させる仕掛けのことです。
で、第三者に思い込みを植え付けるためのトリックの作り方、考え方には主に3つの切り口があります。
- 事件を起こしてから考える
- 舞台設定を決めてから考える
- トリックに使えそうなものを見つけてから考える
①は過去記事で解説した密室トリックの作り方と同じ手順ぽよね
そうです
この①の考え方でアリバイトリックも作れちゃうのです
実は密室トリックを作ろう、アリバイトリックを作ろうという感じで、作りたいトリックを最初から決めている場合、②と③はちょっと不向きです。
②と③ はその状況でどんなトリックができるかを掘り下げる考え方なので、出来上がってみて初めてトリックの種類が決まるのですね。
例えば②で舞台設定を雪山のコテージにした場合、雪山にはどんな物があるかを洗い出し、そこにある物を使ってどんな思い込みが生み出せるか、というアプローチになります。
確かに、トリックに使えそうなものからトリックを考えるとなると、あとから種類が決まるぽよね
逆に①は事件を起こしてみてから、アリバイトリックを成立させるにはどうすればいいかっていうアプローチになります
②③のトリックの作り方は、また別記事で解説しますね。
密室トリックの作り方は、以下の記事で解説しているぽよ
事件を起こしてから考えるトリック作り5ステップ
事件を起こしてからトリックを作っていく手順は以下の通りです。
ステップ1:まずは事件を起こしてみる
ステップ2:真犯人には犯行が不可能だと思い込む状況を考える
ステップ3:第三者の思い込みを洗い出す
ステップ4:思い込みと逆のことを考えて、よさげなトリックを絞り込む
ステップ5:トリックに都合のいい状況を足していく
ステップ1:まずは事件を起こしてみる
では殺人事件が起きてしまうミステリーという前提で、アリバイトリックを手順に沿って考えていきましょう。
まず脳内で、パッと思いついた場所で事件が起きたという想像をしてみましょう。
今回の例では、僕の勤務先のビルのトイレの中とでもしておきますかね
お主の職場はよく事件が起きるぽよね
ステップ2:真犯人には犯行が不可能だと思い込む状況を考える
アリバイトリックを考えるなら、「犯行が不可能だと第三者に思い込ませる」というのはすなわち真犯人のアリバイが成立することですね。
アリバイトリックを成立させるには、以下のどちらかの条件をクリアする必要があります。
- 事件発生時刻に、犯行不可能な場所にいたことを証明する
- 事件発生時刻に、第三者と一緒にいたことを証明する
では、職場のトイレで人を殺害した犯人にアリバイが成立する状況を考えてみましょう。
アリバイが成立する状況
- 犯行時刻と思われる時間帯、犯人は往復3時間はかかるような場所(自宅とか)にいた
- 犯行時刻と思われる時間帯、身内や親友ではない誰かと一緒にいた(身内や親友だと口裏合わせの可能性があるので)
- 犯行時刻と思われる時間帯、誰かが犯行現場以外の場所にいたところを目撃している
ざっとこんな感じですかね
ステップ3:第三者の思い込みを洗い出す
アリバイが成立する状況を考えたら、その状況にどんな思い込みがあるかを洗い出してみましょう。
密室トリックの考え方とまったく同じぽよね
- 本当にその場所にいたという思い込み
- 往復3時間かかるという思い込み
- 殺害現場がそもそも職場のトイレという思い込み
- 遠い場所にいるから犯行不可能という思い込み
- 共犯者はいないという思い込み
身内や親友ではない誰かと一緒にいた
- 身内、親友ではないという思い込み
- ずっと一緒にいたという思い込み
- 一緒にいたのが本人という思い込み
誰かが犯行現場以外の場所にいたところを目撃している
- 証言者が犯人とつながりがないという思い込み
- 目撃したのが当人であって別人ではないという思い込み
- 目撃したのが犯行現場以外の場所という思い込み
ステップ4:思い込みと逆のことを考えて、よさげなトリックを絞り込む
思い込みをたくさん洗い出しましたね。
そしたらお次は、思い込みと真逆のことをする方法を考えてみましょう。
今回はあくまでも例なんで、ステップ3で洗い出したうちの「往復3時間はかかるような場所にいた」に関する思い込みを覆す方法について、色々と考えてみましょう。
本当にその場所にいたという思い込み
- 固定電話に犯人が出たので、その場所にいたと思い込んだが、違う場所から固定電話に出ていた
- 人形を置いて、そこにいるように見せかけていた
往復3時間かかるという思い込み
- 実は短時間で往復できる抜け道があった
- 短時間で往復できる即席の通路を作っていた
- 短時間で移動できる乗り物が存在していた
殺害現場がそもそも職場のトイレという思い込み
- 別の場所で殺して職場のトイレに運んだのち、そこが犯行現場のように偽装した
- 別の離れた場所で殺されたが、職場で被害者を見た者がいたので犯行現場が職場だという思い込みが生まれた
遠い場所にいるから犯行不可能という思い込み
- その場にいなくても自動で動き出して殺害できる仕掛けを使っていた
- 遠隔から操作できる仕掛けを使って殺害を実行した
共犯者はいないという思い込み
- そっくりな双子というのを隠していて、遠くにいてアリバイ作るやつと殺害したやつ二人いた
- 遠くにいる、と証言した人がそもそも共犯者
色々と出してみました。
思い込みを逆転させるアイデアを考えるとき、過去に読んだり見たりした作品で出てきたトリックも思い返してみるとよいですよ。
この状況なら、あの作品のあのトリックも使えそうだな、とかですね。
そのままそのトリックを使うわけにはいかないですが、そのトリックを部分的に変えるだけでも新しいトリックになったりしますので。
ステップ5:トリックに都合のいい状況を足していく
ステップ4で洗い出してみて面白そうだなって個人的に思ったのは、以下ですね
別の離れた場所で殺されたが、職場で被害者を見た者がいたので犯行現場が職場だという思い込みが生まれた
このトリックは心理トリックも含めることができてよさげだなと思いました。
では、これが実現できる都合のいい状況を足していって、トリックを完成させてみましょう。
「職場で被害者を見た者がいるのに、実は別の場所で殺された」という状況をどう実現するか
- 被害者自身が職場の第三者に「トイレに行く」とウソをついて出ていった。
こうすれば、被害者がトイレで見つかれば、現場はトイレだったと錯覚させられる。
なんで被害者自身がウソをついたか。
- 被害者にはうそをついて犯人と合う必要があった(その理由は別で考える必要あり)。
犯人がアリバイを手に入れる方法はどうするか
- 犯人はテレワークをしていた。
決まった時間に宅配便を頼んでおいて、荷物を受け取ることで家にいたことをアピール。
荷物を受け取って、すぐに職場へと向かう。 - 職場に着いた犯人は、職場の第三者とリモートで音声会議をする。
自宅のパソコンから音声会議に出ていると思わせておいて、実は会社のとあるパソコンから自宅のパソコンへリモートで接続し、音声会議に出席していた。
このとき、自宅だと思わせるために録音した近所の学校のチャイムなどを会議の人たちに聞かせるのもあり。
殺害の方法は?
- 犯人は自分に会いに来た被害者を殺害した後、大きな段ボールに入れて台車でトイレへ運び込む。
[課題]運ぶとき誰かに見られそうなリスクの高い行為かも
- この日は休日出勤で、フロア内は第三者と被害者の二人だけだったことにしよう。
- しかも、音声会議の真っ最中に殺害することで、まさかそんなときに殺してるなんて思わんだろ大作戦。
[課題]第三者と犯人二人だけの音声会議だと、二人で話している最中に被害者を殺害したら声がだだ漏れ
- あと二人くらい会議に足しますかね。
- 他の人たちがしゃべってる間にマイクをオフにして、そのときに殺害してしまおう。
- ノートPCで自宅のPCにリモート接続しているということにすれば、ノートPCで会議に出席しながら死体を運ぶことだってできるな。
という感じで、洗い出したトリックを実現するのに都合のいい状況を足していくわけですね。
なんか、今回の例はまだまだ粗がありそうぽよ
まあ、あくまでも例ですし、完成させようとすると長くなりそうなのでここまでにしておきました
とりあえずやり方はこんな感じですよ、と。
現場がトイレの意味はあるのかぽよ
被害者がトイレって言って出ていかないと、あいつ何のために出ていったんだって第三者に疑われるんじゃないかなーなんて
まあまあ、そうやって粗を探してはつぶしていけばいいんですよ
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まとめ
今回の解説内容
- トリックの考え方3選
- 事件を起こしてから考えるトリック作り5ステップ
トリックの考え方には、主に以下の3つがあるぽよ
- 事件を起こしてから考える
- 舞台設定を決めてから考える
- トリックに使えそうなものを見つけてから考える
最初から密室トリックやアリバイトリックを作ろうと決めている場合、「1.事件を起こしてから考える」が最も適しています。
「舞台設定を決めてから考える」は、どんなトリックが使えるかを考えていくので、考えながら密室がいけるな、アリバイ作れるな、となっていく考え方です。
「トリックに使えそうなものを見つけてから考える」はトリック思いついちゃった後に、そのトリックが使える状況を作っていく考え方ですね。
事件を起こしてから考えるトリックの作り方は以下の5ステップぽよ
ステップ1:まずは事件を起こしてみる
ステップ2:真犯人には犯行が不可能だと思い込む状況を考える
ステップ3:第三者の思い込みを洗い出す
ステップ4:思い込みと逆のことを考えて、よさげなトリックを絞り込む
ステップ5:トリックに都合のいい状況を足していく
ステップ1では、思いつくまま事件を起こしてみるぽよ
ステップ2で、どんな状況なら第三者に犯行が不可能だと思い込ますことができるかを考えます
アリバイトリックだから、以下のいずれかが成立すればOKですね。
- 事件発生時刻に、犯行不可能な場所にいたことを証明する
- 事件発生時刻に、第三者と一緒にいたことを証明する
ステップ3では、とりあえず事件を起こした状況の中に、どんな思い込みや常識があるかを洗い出していくぽよ
そんなの書きだす必要ないんじゃ?
って思うようなものも、とにかく洗い出しましょう
「人間は空を飛べない」くらい当たり前のことでもぽよね
ステップ4ではステップ3で洗い出した思い込みを覆すアイデアをどんどん出していきます
このときも、しょうもないって理由で却下したりせず、とりあえず出しきってください。
しょうもないアイデアが、よくよく考えると面白そうだってなったりしますので。
それにアイデアを出していくことで頭の回転も早くなっていって勢いがついて、アイデアが出やすくなりますよ。
ステップ5では、ステップ4で考えた逆転の発想を元に、その発想が実現できる状況を足していってトリックを完成させるぽよ
この考え方で、アリバイトリックだけでなく密室トリックも作ることが可能です
では、この考え方を実践してみてアリバイトリックや密室トリックを完成させ、面白いミステリーを仕上げてみてください。
おつかれさまでした
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