今回は説明的な文章で読者を逃がさないためのストーリー構成テクニックについて解説します。
- どうしても説明が必要で、大事な冒頭でインパクトを狙えない
- 読者に文章が説明的でだらけていると言われてしまう
- 説明的になってしまって先を読んでもらえない
おもしろい設定を考え付いたけど、どうしても説明が必要。
だから良くないってわかっていても、仕方なく冒頭で説明的な文章を書いてしまう。
小説でも漫画でも、こういった悩みは付きものですよね。
説明が長いと、読者の離脱に直結してしまいます。
この記事では、こういった悩みを解決する方法をお伝えしますので、ぜひ最後までお付き合いください。
冒頭でダラダラ説明 やってしまう2つの心理
おもしろい設定ができたぽよ!
そう思ったときこそ、やってしまいがちなミスがあります
できたんだぽよ……
読者に読んでほしいぽよ……
わかりますよ、その気持ち
みんな一生懸命、斬新なアイデアを考えて練り込んでますもんね
斬新だったり練り込まれた世界観というのは、暗黙的に理解してもらうのは難しいですからね
だから、ストーリーが始まる前に、
このお話はこんなルールがあるんです。
こんな世界のお話なんです。
と、説明をだらだら続けてしまうわけです。
これが、やってしまいがちなミスというわけですね。
「冒頭で死体を転がせ」と言われていることからも分かるとおり、冒頭はいかに読者を捕まえて先を読ませることができるかっていう大事な部分。
それなのに、序盤から延々と設定や世界観の説明を続けてしまう。
そうしてしまう作者の心理は次の2パターンでしょう。
- 設定や世界観に自信があり、説明自体が読者を掴むおもしろい要素だと思っている
- 冒頭が大事なのはわかるが、説明しないとお話自体が伝わらないから仕方なく
1については、まず考えを改めましょう。
ネット小説でときどき、こういった感じのコメントのやりとりを見かけます。
読者コメント「説明が長すぎると思います」
⇒作者の返信「ここからが面白いんです。続きを読んでもらえばわかります」
我もやっちゃうかもぽよ、先を読んでほしいぽよ
でも、他の人のやりとり見ると、これはなんだかダメぽよね
そうですね
創作者として、気持ちは痛いほど分かります
でも、説明が長いと思われた時点で、先が面白かろうと読者は離脱です
読者は、登場人物の心がどう動くのか、起きた事件をどのように解決するのかを、早く読みたいと思っています。
なのに冒頭で長い説明があると、
いつ始まるの?
となって、作品に対する興味が失せちゃうんですよ。
考えを改めるぽよ
でも説明は必要ぽよ、どうすればいいぽよ
実は私も過去に、思いっきりこの失敗をやってたんですね。
ということで!
その失敗を例にして、解決方法をご説明します。
ちなみに、修正版をある大物作家先生に読んでもらったところ、
と言ってもらえました。
お主の自慢はいいから、早く説明するぽよ
いや、信ぴょう性を出さないとホラ
冒頭のダラけた説明を一発かいけつ! たった1つの方法
例にするのは「水たまりの前でこんにちは」という作品です。
主人公の家の近所には、梅雨になると必ずできる水たまりがあって、その水たまりを通して未来の自分とお話しすることができる、という設定です。
未来の自分と言っても、水たまりの向こうはパラレルワールドになっていて……
おっと、だらだらな設定の説明はこの辺で
とにかく水たまりには特殊な設定があって、細かいルールなんかもあるわけですね。
そして、水たまりの向こうにいる未来の自分から姉の死が告げられる、というところから物語はスタートします。
この作品における私の失敗は
水たまりの設定や主人公の生い立ち、水たまりの向こう側にいるもう一人の自分との出会いを、冒頭でだらだら書いてしまったことでした。
自分でも、だらだら説明が続くのは良くないなって思ったんですけど、説明がないと先の展開で読者が混乱するし、仕方ないって感じでした
この物語のジャンルはミステリー
一番、冒頭で死体を転がさないとダメなやつぽよね
ですね
ミステリーだけに限らず、どんなジャンルでも冒頭は大事だって、創作者のみなさんは口酸っぱく言われてきたのではないかと
案の定、この「水たまりの前でこんにちは」を読んでくれた友達からは
しょっぱなからダラダラ説明きついっす
という意見が多数寄せられました。
さて、これをどのように変えるかですが、冒頭で説明なんてしなければいい。
これが答えです。
ちょっと何言ってるかわからないぽよ
つまり、説明なんて最初はしないで、物語を先に進めちゃえばいいんですよ
私はどうすればいいかを探るため、冒頭から引き込まれると言われている作品を色々と読んでみたんですね。
そのうちの1つがこれ。
君の膵臓をたべたい (双葉文庫)
大ヒット作品ぽよ
感動したぽよね
CMでもやってたし、有名だから「病気の女の子との出会いと別れ」を描いた感動作だってことは知れ渡っているかと
この作品、冒頭は女の子との出会いからではなく、女の子が死んだ後のことが書かれていました。
主人公は女の子の葬式の日なのに、出席することもなく自分の部屋の中で物思いにふけっているのですね。
なんでそうしているんだ?
大切な女の子だったなら、もっと悲しんだり葬式にだっていくでしょ。
でも、そんな説明は一切ないんです。
説明もないのに、まるで読者は知ってて当然くらいの感じで、物語が進んでいったのですね。
先が気になって、引き込まれました。
これだ!
って思ったんですよね
ということで、「水たまりの前でこんにちは」の構成をどのように修正したのか、ご覧いただきましょう
まずは修正前の構成から。
- 水たまりを発見したエピソード。
未来の自分との出会いや、水たまりのルールなど。 - 家に引きこもって暗くなった姉の存在に嫌気がさしていた主人公。
そんなある日、未来の自分から「姉が死んでしまった」という事実を聞く。 - 突然そんなこと言われても……。戸惑う主人公。
- 久しぶりに姉と、部屋の扉越しに会話する。
「心配させてごめん」と涙ぐむ姉の声を聞く。 - 昔の、優しくてしっかり者だった姉を思い出す。
- 姉が死ぬ未来を阻止するべく、主人公が立ち上がる。
問題になっているのは当然、「1」の水たまり発見やら説明やらのエピソード。
でも「2」で未来の自分から姉の死を聞かされてるぽよ
水たまりの設定を先に書かないと、意味がわからないぽよ
ところが、そうでもないんです
では、どのような構成にしたのかを見ていただきましょう。
- 家に引きこもって暗くなった姉の存在に嫌気がさしていた主人公。
そんなある日、未来の自分から「姉が死んでしまった」という事実を聞く。 - 突然そんなこと言われても……。戸惑う主人公。
- 久しぶりに姉と、部屋の扉越しに会話する。
「心配させてごめん」と涙ぐむ姉の声を聞く。 - 水たまりを発見したエピソード。
未来の自分との出会いや、水たまりのルールなど。 - 昔の、優しくてしっかり者だった姉を思い出す。
- 姉が死ぬ未来を阻止するべく、主人公が立ち上がる。
もともとは「1」で説明していた設定を、後のほうに持っていったのですね。
構成を入れ替えるだけで、劇的に変わりました。
ちなみに「水たまりの前でこんにちは」の冒頭はこんな感じです。
中学に入って三か月弱。セーラー服姿も馴染んできたような気がする。
そろそろ梅雨入りなので、ゆめりんと会える日が近づいている。
彼女は私と同じ夢乃(ゆめの)という名前だから、お互いにあだ名で呼ぶことにしていた。私の記憶によると、彼女のあだ名が先に決まって、ならば私が一つ年下なので五十音順で『り』の後にくる『る』を使おうということになった。
そんなわけで、彼女は『ゆめりん』、私は『ゆめるん』だ。
ちょうど一年前、ゆめりんは私に言っていた。
「ノブ姉が引きこもってから、家の中がどんよりしていて居心地最悪だよ」
今は、その最悪な気分を私が味わっている。
……以下省略……
「ゆめりん」というのが水たまりで出会える一年後の自分だったり、水たまりのルールだったり。
そういった説明は明確には示していません。
ただ、なんとな~く「ゆめりんは一年後の自分なんだ」ということが読者に伝わる程度です。
つまり、細かい話は一旦置いておき、最低限の情報だけを伝えてストーリーをバンバン進めるわけです。
そうすることによって、冒頭で死体を転がす的な「姉が死ぬ」というショッキングな予言を早めに突きつけて、物語に引き込むのですね。
ストーリーに引き込むことに成功したなら、読者は謎に包まれたままの水たまりの設定にも興味を持ちます。
そして、説明として必要だった水たまり発見や未来の自分との出会いのエピソードも、ストレスなく読んでくれるようになるってわけですね。
ここで例え話を一つ
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我も好きぽよ
ストーリーではなく、登場するヒーローや怪人の設定などが書かれた本なんですよね。
これ、ワンパンマンという作品が好きで興味があるから買っちゃったわけで、漫画を読む前にヒーロー大全を買う人なんていないですよね。
設定というのは、読者がストーリーに引き込まれて興味が湧いてこそ、読んでいられるのです。
ということで、どうしても説明が必要な設定があるのなら、その説明を後に持っていけばよいのですね。
設定はただ説明するな エピソードで説明せよ
ついでなんで説明的なエピソードの書き方についても、軽く触れておきます
説明が必要とはいっても、あくまでエピソードとして書きましょうね。
もちろん、ある程度の説明的な文章は必要ですが、
「こんなルールがある」「あんなルールがある」
といった文章をだらだら書いちゃったら、ただの説明書になっちゃいます。
今回の水たまりを例にしますと、
- 幼い頃の主人公が水たまりを覗き込むと、向こう側の自分もこっちを見ていてお互いに驚く
- 水たまりを利用してクラスのみんなの前で未来予知を披露しちゃう
というように、あくまでも登場人物の動きを追いながら設定の説明をしましょう。
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まとめ
- 冒頭でダラダラ説明 やってしまう2つの心理
- 冒頭のダラけた説明を一発かいけつ! たった1つの方法
- 設定はただ説明するな エピソードで説明せよ
冒頭でダラダラ説明はダメぽよ
でもやってしまう理由があるぽよ
理由は2つですね
- 設定がおもしろいから、読んでもらえるという過信
- 説明がないと成り立たないから仕方なく
冒頭での長い説明は読者の離脱につながります。
解決するには、説明を後に回すぽよ
説明はいったん置いといて、冒頭ではストーリーをどんどん進めていきましょう
ストーリーに引き込めさえすれば、読者も設定に興味を持ち始めます。
設定はエピソードで語るぽよ
ただの説明文を長々と続けず、何らかの出来事や主人公の行動で設定を説明するようにしましょう
では、設定の説明が必要だと思ったら冒頭でだらだらと語らず、説明を後ろに回してストーリー構成を改善してみてください。
おつかれさまでした
構成の改善方法を私に気づかせてくれた「君の膵臓を食べたい」。
まだ読んでない人は読んでみてください。
構成の上手さは冒頭だけじゃない、読者を感動させる仕掛けが見事な作品です。
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