今回はプロの小説や漫画のストーリー構成を抜き出して、面白さの秘密を理解する方法について解説します。
こんな人に読んでほしい
- 面白いストーリーの作り方を色々と調べてみて納得いく答えを見つけたけど、具体的にどうすればいいかわからない。
- ストーリーの作り方を学んでみて理屈は分かったんだけど、いざストーリーを作ってみると上手くいかない。
- プロや受賞作の面白さの秘密が知りたい
この記事を読むことで、プロや受賞作の共通点を具体的に見出したり、面白いポイントがどのあたりにあって、どういった構成になっているかの分析を自分自身でできるようになります。
そして、面白い作品の構成をしっかり理解したうえで、自分の作品に取り入れてプロ並みの作品を生み出すことができるようになりますので、ぜひ最後までお付き合いくださいませ。
ストーリーを自ら分析する力を身に着けよう
私はこのブログで記事を書くために色んな作品を分析して、ストーリー作りの記事やテンプレートを作ってきました。
ブログを読んでくれた方から「我那覇さんは分析力がすごい」っていう感想をいただけることもあります。
実はその分析には方法があって、それ私は知っていたってだけなんですよね。
この方法を知る前の私は分析なんてまったくできませんでしたし、方法を知ってからは新人賞でも悪くない結果が残せるようになったのです。
もったいぶらずに、やり方を教えるぽよ
分析をするためには、まずプロや受賞作の構成を抜き出す必要があります
プロや受賞作の構成を抜き出す2ステップ
プロの作品や受賞作の構成を抜き出す手順は、以下の2ステップです。
- プロット化
- 抽象化
これは面白いストーリー構成をプロの作品からいただいちゃう方法ということで、過去の記事でもご紹介したものです。
以下で読めるぽよ
一応、ざっくりとやり方を解説しますね。
すでに上の記事を読んだ方は、この2ステップの解説は飛ばしちゃってください。
ステップ1 プロット化
まず、おもしろいと思ったプロの作品をプロットの状態に起こします。
プロットというのは、ストーリーを簡単に書き記した小説の設計書みたいなものですね。
ストーリーの分析までしようとしている人なら、プロットくらいわかるぽよね
基礎中の基礎ですので、分からない方はプロット含めて小説の基礎から学びましょう
以下の記事で解説していますので
ステップ2 抽象化
プロットにしたら、その内容を抽象化していきます。
抽象化というのは、プロットの内容を曖昧な表現に書き直すことですね。
以下のような感じぽよね
プロット:「名前が書かれると、書かれた人間が死ぬノートを拾う」
抽象化 :「特殊な能力を宿したアイテムを拾う」
抽象化した構成をもとに分析してみよう
では例として、とある短編漫画を私が抽象化してみたので、結果を見てみましょう。
作品名は伏せますが、実写映画化もされたくらい売れている作品です。
この短編漫画を2話ほど抽象化したので、それを縦に並べてみてみますね
ちなみに左と右を見比べやすくするために、似ている箇所が並ぶようずらしています
1話目 | 2話目 |
---|---|
ストーリーテラーが現れて、 ストーリーのテーマについて語る | |
主人公の悩みと願望(願望)について説明。 主人公の願望をすでに叶えている者と 比べてしまい、主人公が劣等感を感じる。 | 主人公の信念(願望)について説明。 |
主人公の願望をすでに叶えている人物から ひどい扱いをうけ、その人物に嫉妬の怒りを燃やす。 | 主人公には願望を叶えるだけの 能力がないことを知らしめる出来事が起こる。 |
ストーリーテラーが現れて、能力を手に入れる。 能力についての説明を受ける。 | ストーリーテラーが現れて、能力を手に入れる。 能力についての説明を受ける。 |
主人公、半信半疑で能力を使い、 小さな願望を叶える。 | 主人公、 能力で願望を叶えて高揚感、 達成感を感じる。 |
能力が本物だと考えた主人公は、 能力を使ってさらに大きな願望を実現する。 その願望が叶い、劣等感から解放されて浮かれる | 能力を使って、次々と主人公の 信念(願望)を実現していく |
ストーリーテラーが現れて、 能力に対する注意事項を述べる。 この注意事項は、オチで主人公の身に 起こる出来事の伏線となる。 | ストーリーテラーが現れて、 能力に対する注意事項を述べる。 この注意事項は、オチで主人公の身に 起こる出来事 の伏線となる。 |
願望が叶った主人公に、かつて劣等感を 抱えていた頃の嫉妬心を思い起こさせる 出来事が起こる。 もうあの頃の自分じゃない、と調子に乗った 考え方をするようになった主人公。 | 自分の実現している望みだけでは 満足できなくなってくる主人公。 |
ストーリーテラーの忠告を無視して、 能力を過信。 能力を乱用する。 | |
叶えた願望が、主人公の思いもよらない 事態を引き起こす。 | 自分の信念(願望)を貫きたいがために、 悪い方向で能力を使い、 取り返しのつかないことになる |
主人公がひどい目にあう。 自分が叶えようとしていた願望を掘り下げると、 恐ろしいことにつながる可能性が あることを提示したオチ。 | 主人公がひどい目にあい、正しいと 思っていた信念の裏にある高揚感、 満足感こそがエゴだということを知る。 |
オチを皮肉ったエピローグ。 | オチを皮肉ったエピローグ。 |
構成的に一致している箇所は、青マーカーを付けてみました。
左と右は異なる話ではありますが抽象化してみると、ものすごく似ているでしょう。
こういったお話は、最後に主人公がひどい目にあうだろうと予測できるけど、どんなオチが待っているのかドキドキしながら読み進めるタイプの作品ですよね。
じゃあどのあたりから、どういったストーリー上の仕掛けで、読者は主人公の末路を予感してドキドキするのか、それを読み解くことはできますか?
能力を手に入れた時点で、なんか裏がありそうな気がして怖いぽよね
それもありますね
お約束展開ですし
ですが、やはりストーリーテラーが再登場して注意点を主人公に伝えたあたりが一番、読者の不安を煽っていますよね。
主人公、絶対に能力の注意事項を破るぽよね
それです
おそらく普通に読んでても「あー、お約束来たな」って思うはずですが、こうして抽象化すると、ストーリーのどのあたりでそれを入れれば面白い構成にできるかが、よくわかりますでしょう。
さらにオチと結末ですが、両方とも「オチを皮肉っている」っていう共通点もあるんですよ。
こういった「主人公が能力を手に入れて最後はひどい目に合う」パターンの短編で秀逸な作品って、皮肉も、そして皮肉につながる伏線もすっごく上手いんです。
さらに言うなら、この皮肉の利かせ方が上手いほど、最後のオチで面白いと私は感じたんですよね。
抽象化してみることで、自分がどの瞬間に面白いと感じたのか、なぜ面白いと感じたのかも整理できます。
まさに分析ぽよね
異世界チート系は特に分かりやすくて分析しやすい
ちょっと前、私は異世界チート系のテンプレートを記事として書きましたが、そのときもこの抽象化を使って面白い異世界チート系の特徴を分析しました。
異世界チート系は抽象化してみると、面白いポイントがパターン化されていることが顕著にでてました。
美少女が主人公好きすぎる、チートで労せず無双、「また俺、何かやっちゃいました?」とか、分析しないでもなんとなくわかるぽよ
では、転移して最初に出会う親切な男もお約束で出てくるってのはどうです?
そういえば出てくるぽよね
街の案内役にもってこいぽよ
それはその男の役割の一つにすぎないのです。
最初に出会う親切な男の役割
- 案内役
- 親友、理解者になってくれる(主人公に感情移入している読者も、理解者がいることがうれしくなる)
- 権力者とも繋がっていたり異世界での顔も広かったり、ストーリーを広げるのに便利
- 主人公のすごさをストレートに褒めてくれるし、周りにも自慢してくれるので、読者の気持ちよさをさらに高めてくれる
といった役割があったんですよ。
他にも、異世界チート系のラノベって一人称で書かれていながら、この親友視点に切り替わることが多々あります。
分析しているとわかるんですけど、親友視点に切り替わった場合、たいていは主人公のことをめちゃくちゃ褒めます。
自分のことを裏で褒められたら、めっちゃうれしいでしょ。
現実世界じゃ裏で褒められるのって、誰かから直接聞いたり偶然聞いたりじゃないと実現できない嬉しさです。
それを異世界チート系では、三人称っていう書き方を利用して実現させているわけですよ。
異世界チート系って、さほどの苦労もなくモテて英雄になって認められまくるという夢のような体験を読者に提供しているジャンルだってことは知れ渡っていますよね。
三人称を使ったりキャラに役割を与えたりして、徹底的にそれをやっていたぽよねえ
同じジャンルを複数分析してみると共通点が見つかる
抽象化によって、ストーリーの仕組みや自分が面白いと思った瞬間がどこなのかが整理できるということが理解できたかと思います。
そして、同じジャンルの作品をいくつか抽象化して並べてみることで、共通点が簡単に洗い出せます。
共通点があるということは、そこにストーリーの面白さや醍醐味を引き立てる仕掛けがあるということです。
複数の同じような作品を抽象化してみて、以下のようなことに注目してみてください。
- 自分が面白いと感じた瞬間、怖いと感じた瞬間、先を期待した瞬間のシーンはどこか
- 複数作品での共通点があるなら、なぜそんな共通点があるのか
- 抽象化した状態を起承転結で並べたとき、共通点が同じ場所(例えばどちらも「転」が同じなど)にあるなら、なぜそうなっているのか
ストーリーのジャンルや流行り廃りによって、広くウケる面白い作品というのは変わってきますよね。
だけど上記のようなことを考えながら同じジャンルをいくつか分析してみると、各ジャンル特有のストーリーを面白くするための仕掛けが見えてきます。
その仕掛けを自分の作品にも取り入れたら、面白くなること間違いなしぽよね
いやー、仕掛けを活かせるかどうかは、作者の出したアイデア次第かな
でも、プロの仕掛けと自分の考えた仕掛けを比べることはできますよね。
例えばさっきの「オチを皮肉ったエピローグ」を自分も考えてみた場合、プロの考えた皮肉と比べてみるわけです。
そのうえでプロの皮肉にくらべて微妙だなと感じたら、さらに上のアイデアを練り直すという対策が立てられます。
対策すべき箇所がはっきりしているというのは大きいですよ。
自分の作品の質を上げたい方、プロの作品や受賞作の面白さの秘密を解き明かしたい方は、ぜひこの抽象化からの分析をやってみてください。
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まとめ
今回の解説内容
- ストーリーを自ら分析する力を身に着けよう
- プロや受賞作の構成を抜き出す2ステップ
- 抽象化した構成をもとに分析してみよう
- 同じジャンルを複数分析してみると共通点が見つかる
作品を分析することができれば審査の通過もできるようになって、受賞の確率も上がるぽよ
作品の分析をするためには、構成を抜き出して抽象化する必要があります
手順は以下の2ステップ。
- プロット化
- 抽象化
これのやり方は、以下の記事で解説しています。
いくつかの作品を抽象化して並べてみたら、共通点がみつかるぽよ
共通点はそのジャンルの面白さを引き立てる仕掛けがある箇所ですので、なぜそんな共通点があるのかを考察してみましょう
特に、以下のような視点で分析してみるとよいですね。
- 自分が面白いと感じた瞬間、怖いと感じた瞬間、先を期待した瞬間のシーンはどこか
- 複数作品での共通点があるなら、なぜそんな共通点があるのか
- 抽象化した状態を起承転結で並べたとき、共通点が同じ場所(例えばどちらも「転」が同じなど)にあるなら、なぜそうなっているのか
では、私もこれから先、色々と分析していってみなさんのお役立ちできる記事を書いていきますので、みなさんも分析とかしてみて自分の作品をプロレベルに仕上げてみてください。
おつかれさまでした
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