今回は一人称と三人称のそれぞれの利点と、どちらで書くべきかを判断する方法を解説します。
- 一人称と三人称のどっちで書けばいいんだろう
- 一人称と三人称のメリット、デメリットを知りたい
- 一人称と三人称それぞれに向いているジャンルや作風について理解しておきたい
一人称と三人称の二択は小説を書き始めるときに、まず考えないといけないことですね。
一度書き出したら変更するのは大変なだけに、どの人称で書くべきかは慎重に考えなければいけないことです。
この記事を読むことで、一人称と三人称のそれぞれのメリットとデメリットがわかります。
また、書こうとしている作品が一人称と三人称のどちらに設定すべきかの判断ができるようになりますので、ぜひ最後までお付き合いください。
一人称と三人称それぞれの特徴を理解する
小説を書く場合、まずは一人称と三人称のどちらで書くかを決める必要がありますね
二人称は選択肢にないのかぽよ
二人称はチャレンジしたい場合にどうぞ
基本的には二択でしょう
それを決めるための基準を知るためにも、まず一人称と三人称がそれぞれどういう作品に向いているかを理解しましょう。
一人称の特徴とメリット・デメリットについて
一人称の特徴
一人称は常に主人公の視点で書かれた作品です
他の人物の心の声は一切書けないぽよね
- 常に主人公の内面が書かれている
- 主人公以外の人物の内面は書けない
- 主人公が見えていない、気づいていないことは書けない
一人称のメリット・デメリット
一人称の特徴を踏まえて、一人称のメリット・デメリットを上げてみると、以下のようになります。
- 常に主人公の内面が読者に入ってくるので、主人公に共感しやすい
- 主人公の成功体験を読者も体感でき、カタルシスが生まれやすい
- 主人公以外の内面が描けないので、主人公が周りにどう思われているのかをストレートに表現できない
- 主人公がいない別の場面が書けないので、「一方そのころ」ができない
上記のメリットを見てのとおり、一人称の小説は主人公に感情移入しやすいので、
- 主人公に共感してもらいたい
- ハッピーエンドの喜びを感じてもらいたい
- 悲しい結末に涙してほしい
といった作品が書きたいなら、一人称が断然向いています。
デメリットの「主人公が周りにどう思われているのか」って、どういうことぽよ
例えば、主人公がイケメンでモテモテだったとして、それを一人称で書こうとします。
- 「俺は顔もよくて、女の子にモテモテだ」
このように書いたとしても、これは周りにどう思われているか、ではなく主人公の主観です
ていうか、一人称でこんなこと書いたらバカみたいでしょ
ただの痛いやつぽよね
いくら「イケメンだ、最強だ」と文章で書こうとも主観でしかなく、周りが本当にそう思っているかをはっきり書くことはできないのです。
一人称に向いているであろう作風
- 恋愛小説、ラブコメなど
恋心を抱く主人公のドキドキや切ない気持ちがストレートに書けますね。 - ヒューマンドラマ、純文学など
主人公の心の変化や葛藤といった、一番大事な心理描写を作者の思うままに書くことができます。
向いている「であろう」とは、あいまいぽよね
その理由は後々の「人称の向き不向きにジャンルは無関係」で語ります
なんか二枚舌なタイトルぽよね
三人称の特徴とメリット・デメリットについて
三人称には三種類ある
三人称は主人公の視点だけでなく、さまざまな視点で書かれた作品です
便利ぽよね
三人称はさらに三種類に分かれています。
- 『三人称限定視点』
登場人物の誰か一人の視点で書かれ、場面の切り替わりのタイミングで別の人物の視点に切り替わる。 - 『三人称全知視点』
すべての登場人物の内面を同時に書くことができるため、特定の人物の主観が入るような文章は書けない。
別名「神の視点」とも呼ばれている。 - 『三人称客観視点』
登場人物の内面は一切書かず、常に客観的な視点で書かれた文章。
人物の内面を描かない分、登場人物の誰も気づいていない事実を描くことができる。
世に存在する三人称の小説は、ほとんどが「1.三人称限定視点」で書かれています。
ホントかぽよ
適当なこと言ってないかぽよ
では、「たぶん」と言っておきますかね
これまで読んできた三人称の小説で、「1三人称限定視点」以外を見かけたことがないので
というわけで、これ以降に語る三人称はすべて「1三人称限定視点」と思ってください。
三人称の特徴
三人称の特徴は以下のとおりです。
- さまざまな人物の内面が描ける
- 主人公がいない場面に存在する人物に視点を切り替えることで、「一方そのころ」の出来事が描ける
三人称のメリット・デメリット
三人称の特徴を踏まえて、三人称のメリット・デメリットを上げてみると、以下のようになります。
- 様々な人物の内面が描ける
- 様々な場面の状況が描けるので、映画やアニメのような場面変更に近いイメージで文章が書ける
- 主人公が周りにどう思われているのかを描くことができる
- 主人公以外の内面が書ける分、主人公への感情移入が薄れる
- 視点が切り替わったことが伝わる書き方を心掛けないと、読者が混乱してしまう
三人称の最大のメリットは、何と言っても「様々な場面が書ける」ことでしょう。
書きたいストーリーの構成上、色んな箇所で起きた出来事を並行で書く必要があるとなったら、もはや三人称一択になりますね。
デメリットに「読者が混乱してしまう」ことがあるってことは、一人称より難易度高いぽよね
そのとおりです
一人称は最初から最後まで同じ人物の視点なので、すごく書きやすいんですよ
三人称に向いているであろう作風
- サスペンスやミステリーなど
謎解きを楽しむジャンルなので、色んな人物の立場で調査が進む作品も書けますし、犯人に殺されてしまう被害者の視点で恐怖を煽ることもできます。
サスペンスやミステリーは主人公の内面よりも、謎やトリックの解明を楽しむのが醍醐味だったりしますね。
なので「一人称より感情移入しづらい」というデメリットの影響も少ないのです。
人称の向き不向きにジャンルは無関係
一人称、三人称でそれぞれ向いているジャンルをあげたのですが、人称の向き不向きにジャンルはあまり関係はありません
あげておいて、それは矛盾してるぽよ
当たらずとも遠からず、というやつでして、具体的にイメージしてもらうためにあえてジャンルを示しました。
しかし、向き不向きはジャンルではなく、どういったストーリーが書きたいかで決まります。
例えば、まだ向き不向きとしてあげていないアクションやホラー、SFはどうでしょうか。
小説に限らず漫画や映画というのは、読者に物語を疑似体験してもらうというエンターテイメントです。
よく、物語で一番大事なのはストーリーではなくキャラクターだ、ということを耳にしますね。
つまり、キャラクターにいかに感情移入できるかが大事であり、感情移入できるからこそ、読者は物語を疑似体験して楽しむことができるというわけです。
アクションも主人公の成長や葛藤を読者が共有することで、熱い気持ちになれたり感動できたりします。
ホラーも主人公の恐怖を読者が感じ取るからこそ、怖さが伝わります。
なので、理由がない限り一人称を選ぶのが正しいと考えられます。
ただし「理由がない限り」ここが重要。
アクションでもホラーでも、ジャンルに限らず
- 様々な人物の視点で場面転換することで一つの物語が形成されて、最後は一つにつながるという構成の物語を書きたい
というのであれば、三人称一択になります。
こういった物語はむしろ三人称で書いた方が「伏線すげー」「一気につながった! やばい!」っていう、感情移入とは違った感動を与えることが可能になりますね。
また、一人称に向いているとしてあげた恋愛小説やヒューマンドラマでも、以下のような場合は三人称で書く必要があります。
- 恋愛における三人称
好き同士のそれぞれの視点での気持ちを描いて、すれ違いのもどかしさや三角関係の切なさを表現したい - ヒューマンドラマにおける三人称
複数の人間の内面をそれぞれの視点で描くことで「あいつがこう思っていたとき、こいつはこんな気持ちだったんだー」といった楽しませ方を表現したい
他にも、一人称の文章で書き進めながら、章ごとに人物の視点を分ける書き方もあります。
そういった三人称に近いヒューマンドラマの例としては、もうすぐ滅んでしまう地球を舞台に、残された時間の向き合い方を様々な人間の視点で描いた傑作!
伊坂幸太郎先生の「週末のフール」がオススメです。
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また、純文学系だと、5人の視点が章ごとに切り替わり、最後のどんでん返しに結び付く、芥川賞作家、吉田修一先生の「パレード」が参考になるかと。
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逆にミステリーやサスペンスだったとしても、探偵役ではなく助手のような立ち位置の一般人視点で謎解きを進めることで、探偵役の頭の良さや謎の解明への驚きを読者にも共有しやすくなります。
これらのことを踏まえて、一人称と三人称の選択は以下のように考えるとよいでしょう.
- どちらか迷うのならば一人称
- 主人公がいない場所の出来事も書く必要がありそうと思ったなら、まずはその場面を後から主人公が知るというように、一人称でも表現できないか検討する
- 絶対に三人称じゃないとダメだって確信できるストーリーなら三人称
でもラノベだと章とか関係なく、一人称なのに視点が別の誰かに切り替わるやつ、よく見かけるぽよ
それはラノベ特有の手法ですが、ちゃんと理由があります
別記事で解説しますね
まとめ
- 一人称と三人称それぞれの特徴を理解する
- 一人称の特徴とメリット・デメリットについて
一人称の特徴
一人称のメリット・デメリット
一人称に向いているであろう作風 - 三人称の特徴とメリット・デメリットについて
三人称には三種類ある
三人称の特徴
三人称のメリット・デメリット
三人称に向いているであろう作風 - 人称の向き不向きにジャンルは無関係
- 一人称と三人称を決める基準
一人称は常に主人公の視点で書かれた作品ぽよ
常に主人公目線なので、感情移入がしやすいのが最大のメリットですね
主人公以外の心の中や、主人公がいない場面は書けないのがデメリットぽよ
三人称は色んな登場人物の視点に切り替わる作品ぽよ
全ての登場人物の内面が描けて、さまざまな場面の出来事を伝えることができるのが最大のメリットです
その分、主人公への感情移入が薄れるのがデメリットぽよね
どうしてもいろんな場面を描きたいのであれば三人称
そういった理由がない場合は一人称
主人公以外の視点が必要だと感じたとしても、それが本当にストーリー上必要かを検討しましょう
そのうえで、一人称でも問題ない別案があるのなら、一人称にすることをおすすめします
書きたい小説が「感情移入を重要視したい」のか「様々な視点を描く必要があるのか」をしっかり見極めて、どちらで書くかを決めましょう。
おつかれさまでした
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